ソラノハテ:第一話







僕はきっとあそこへ行くんだ。
あの空の果てへ・・・。









遥か遠い昔。


天空からヒトが舞い降りてきたという言い伝えがある。
そのヒトは背中に羽を持ち、自由に空を飛ぶことができたという。
姿かたちは地上のヒトと変わらず。
その背中の羽は限りなく純白に近い白。
地上の人々はその姿を神の遣いとあがめ、天羽(テンウ)と呼んだ。



それから数千年。
ヒトと交わった天羽はその羽を退化させ、その血は地上のヒトの中に完全に埋もれてしまった。
その羽を持つ姿は、すでに伝承の中のみにわずかに残すのみである。



・・・・・・



時は新白羽暦7890年
物語は龍街(ロンガイ)を周囲に持つ城(セン)の中から始まる。


「僕はきっとあそこへ行くんだ。あの空の果てへ」
「そのときは私も連れて行ってくれるんでしょ?」
「うーん、それはどうかなぁ」
「えいっ!」
ゲシッ!という音と共に広場に寝っ転がっていた男の子の横っ腹に女の子の蹴りが軽く入る。
「なにすんだよー」
「そういう時は心に思っていなくても、『うん』と言っておくものだって、いつも言っているでしょ!」
「そーいうもんなのかなぁ?」
「そーなの!」
「何度聞いても納得いかない気がするよ。僕は勝手にあの場所へ行きたいと思っているだけなんだから、ほっといてくれればいいのになぁ」
蹴られた男の子の名は紫羽(シウ)。
一般市民は外にでることのできない城の中から天井を見上げ、その蒼い空の果てを夢見る14歳である。
「いーかげんその意味に気が付きなさいよ。この唐変木!」
蹴った女の子の名は深雨(ミウ)。
城の運営を司る宮司神官長の娘。
正真正銘のお嬢様である。
圧倒的な権力を背景に好き放題やってきたのだが、天涯孤独で独り身。その上どんな権力にも動じない紫羽に興味を示し、よく付きまとっている。
紫羽と同い年の14歳。
「まぁ、別にいいけどさ。あぁ、でもあの空にいけたら楽しいだろうな〜」
うっとりと空を見つめる紫羽。
「空に行って何をするの?」
「まずは自由に空を飛んでみたいね。それからどこまで空があるのか確かめてみたい」
「空を飛ぶ・・・かぁ。それができたらステキだね」
「でしょ?昔のお話には、空を飛ぶことのできるヒトが空から降りてきたっていう伝承があるんだ。だから僕たちもいつか空を飛ぶことができるかもしれないよ」
「そんなのできるわけないよ。城の全員を確認したって誰も羽を持っている人間なんていないし、昔話の中の話でしょ?紫羽はそんな話、本当に信じているの?」
「図書館の本とか、昔のデータベースを調べれば結構そういう文献は多いんだよ。だから強ち嘘というわけでもないんじゃないかな。本当だっていう証拠もないんだけど」
説明しながらも、なんの根拠も無いことを認め、紫羽は頭をかいた。
「ま、そんな紫羽が気に入っているんだけどね」
深雨が紫羽に聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさでぼそっと自分の気持ちを口に出した。
「なんか言った?」
「いーえ。なんにも!」
二人の時間は常にこのような調子だった。

To be.....




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2003 04/22 Written by ZIN Kozan
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